米・雇用統計が良く、アメリカ市場が好調でも、世界の景気はおそらく悪い・・・
2016年7月8日 米・雇用統計の結果を受けて
数ある経済指標の中で、最も重要だと言われているのが、米国で発表される雇用統計。
6月の失業率は4.9%で、前の月より0.2ポイント悪化しました。一方、前回、極めて低い伸びにとどまっていた農業分野以外の就業者数は前の月に比べて28万7000人増え、市場の予想を大きく上回りました。
アメリカの労働者が予想より大幅に増加したことから、株式市場はプラスに反応した。特に、米国株の強さを表す指標、NYダウは、英国のEU離脱問題の下げを取り戻す上昇だった。
ダウは一時140ドルほど高い1万8030ドル台に上昇し、英国の欧州連合(EU)離脱が決まる前の水準を上回った場面もあった。
世界の株価を見渡すと、一人勝ちの米国市場
ダウが18,000ドルになった。実はこの値、ダウの過去最高値に近い数値である。
ダウは1年前に史上最高値を付けていた。では、世界の株価が2015年5月以降どう変化したのか。
1年チャート(2015年7月~2016年7月)で比較してみたいと思う。
主な世界の指数を比較すると、米国のNYダウが一番パフォーマンスが良い事がわかる。そして他は軒並みマイナスだった。
この現象は謎だった。なぜなら、世界全体の株価がある程度下がっている中、米国市場だけが強いのだ。
世界の景気や株価はある程度連動するのだから、NYダウも多少下がって良いはずである。
それなら、米国株の好調は、別の要因かもしれない。
例えば、為替だ。特に日経平均は、ドル円が100円近辺と円高になり、株価下落の影響は大きいとよくニュースになっている。
主要指数の中で、日経平均が冴えないのは、実際問題円高が原因でもありそうだ。
しかし、ドルの強さ(ドル高)を示す指標と、世界の主要通貨ユーロ/ドルの1年チャート推移を比較すると、1年前と差はほぼ存在しない。
ならば、ユーロという通貨使用している、ドイツの指数だって良いはずである。不思議である。
日本でも堅調な銘柄は存在する
さて、ここで世界だけでなく、目線を変えて日本の銘柄の1年チャート比較をしたい。
先程のチャートから日経平均は不調だった。しかし、日経平均に採用されている企業の中では、パフォーマンスに差が生じていた。
- 橙:NTTドコモ
- 赤:アステラス製薬
- 青:トヨタ自動車
- 緑:三菱UFJフィナンシャル・グループ
上記4銘柄は、有名な日本の超一流企業である。
見て戴くとわかるように、1年間のパフォーマンスの高低は
このように、分類出来そうである。
ここ1年はディフェンシブ(安定収益)企業の銘柄が強い
株に詳しくない人には馴染みのない話かもしれない。実は、同じ東証1部の企業であっても、投資する際、いくつかのタイプに分類されることがある。
今回比較した4つの企業をあえて2つに分類するなら
- 安定収益(ディフェンシブ)企業:NTTドコモ、アステラス製薬
- 世界景気連動企業:トヨタ自動車、三菱UFJフィナンシャル・グループ
この2つと言っていいかもしれない。
どの企業も景気に左右されることがある。しかし、景気連動する割合は企業によって異なる。
今回比較した日本企業の中で、1年間のパフォーマンスが良かったのは、急成長したり、景気連動して業績が伸びる企業ではなかった。しかし、安定して収益を上げることの出来る企業だった。
そういう企業を、金融業界ではディフェンシブ銘柄と呼ぶ。守りの銘柄という意味だ。
NYダウ、アメリカ企業がなぜ強いのか?
アメリカを代表する30社の企業を集めたNYダウだけでなく、
アメリカを代表する500社を集めた指数S&P 500、
IT関連がメインのNASDAQという指数もここ1年では高パフォーマンスだった。
- 橙:NYダウ
- 青:S&P 500
- 赤:ナスダック(100)
アメリカの株式は堅調だ。しかし、日本を始め、世界の指数は堅調ではない。
この理由は、アメリカの景気が良いからだと言う意見もあるだろう。
だが、アメリカの景気が本当に良いなら、世界の景気も良くなってしかるべきだ。
なぜなら、GDP世界1位のアメリカ経済が世界を牽引している要素は確実にあるのだから。
そう考えると、モヤモヤしてしまう。
ただモヤモヤした中で、1つの答え生まれたので今回記載することにした。
仮に、世界中の投資家に聞いたとしましょう。
これから1年間の世界市場を比較して下さい。
最も安定収益が確保出来る株式市場はどこでしょうか?
答えはきっと、世界を代表する優良企業を集めた米国市場ですよね?
アメリカが堅調だからダウが伸びているのではない。私はそう思った。
違うという人もいるかもしれない。ならば、2003年以降のような、あるいは、去年まで世界中で株価が上昇した現象。それが今年も発生して良いはずだ。
そして、自分の中で1つの答えが得られた。
世界がディフェンシブ銘柄を求めてNYダウを買っているだけではないかと。
また、過去のトレンドから1つの傾向がわかっている。
ディフェンシブ銘柄が買われるのは、景気が悪い時という傾向だ。
だから、米・雇用統計が良く、アメリカ市場が好調でも、世界の景気はおそらく悪い・・・