bull_bear’s diary

経済や金融についての個人的な考え事を書くブログ

『トヨタの自分で考える力』という書籍を一読して投資で活用できそうなこと

はじめに

 トヨタ自動車という企業

 日本の企業を考える上で、トヨタ自動車という企業は異質だ。

 今日、ふとそう思った。

 それは、時価総額が約20兆円、日本で一番の企業価値を持つ企業だからだ。

 日本国内で比較すると、

 時価総額上位:株式ランキング - Yahoo!ファイナンス

 と、企業単体で見ると2位と2倍近い差である。

 

 一方世界で比較すると、2016年4月頃では33位ではあるが、世界で見てもトップ50の企業価値時価総額)を常にキープしている。

 世界時価総額ランキング2016 ― World Stock Market Capitalization Ranking 2016

 

 当たり前だが、日本にはそのような企業は他に存在しない

 『トヨタの自分で考える力』という書籍を一読して

世界の経営や考え方を学ぶという話は良く聞く。

しかし、トヨタという企業経営や企業文化についてあまり調べないでいた。

日本人なのにトヨタについて調べないのはもったいないと思い、比較的簡単そうな書籍を一読した。

タイトルは、『トヨタの自分で考える力』という書籍。

 

大まかな内容は、

  • とあるサーバベンダーの会社にトヨタ式の考え方を持った取締役員がやってくる。
  • 一般社員(主人公)が日々、社会人としてよく遭遇する数々の問題や悩みに対して、その役員がトヨタ式の考え方をアドバイスする

というストーリー形式の書籍だった。

非常に読みやすい、いわゆるビジネス書なのだが、自分が一番ハッっとなったのは次の章だった。

16現場が先で、データは後だ

この章は、データを重視することが近年多くなっているが、現場を見ることも大切にするべきだというストーリーであった。

特に、印象に残っているのは次の一文である。

データはあたりをつけるのに用いるべきものだ。重要なのは、現場をじっと見ることだ。あるいは、現場を 見て気づいたことをデータで実証する。『見る』という行為があって初めて、問題と真因がつかめることを忘れてはならない。実際、トヨタの役員は何か問題が あると思うと、一時間でも二時間でも、じっと一つの現場を見ていたものだ」

現場が先

投資をする上で、日本や世界の経済指標、決算書などのデータは非常に重要である。その結果で、為替が動くことも、株価が反応することもある。

しかし、これは過去のデータである。つまりリアルタイムではないのだ。

本書を読みながら、現場に行くことで、先にそのデータを予想したり、投資に役立てることが出来ないかと思った。

 

例えば、日本のアパレル最大手ファーストリテイリングユニクロ)は毎月の売上高を発表している

国内ユニクロ売上情報 | FAST RETAILING CO., LTD.

 

これは、毎月ではあるが、リアルタイムでは無い。

実際に現地に足を運ぶことで、得られる物は限定的だが早いはずである。

  • 大まかな売れ行きが把握できるかもしれない
  • 何が売れているのかがわかるかもしれない
  • 何をプッシュしているのかがわかるかもしれない

月次でも、四半期ごとの決算でも、総括はしてくれるが、その情報は古い。

 

実際に足を運ぶことで見えてくることはきっとあるはずだ。

つまり、投資という行為は、ROEなどの投資価値があるかを測るデータのみで判断出来る物では無いのかもしれない。

自分で見て、聞いて、そこから判断するということの方が、思ったよりも重要なのかもしれない。

と、以前聞いた、投資の格言にも似たような言葉はあったはずだが忘れていた。

さて、ここまでは現場が先という部分だ。

データが後

そして、データが後に関わる話で、気になるのが次のデータである。

今年2016年5月の米国の雇用統計である。

f:id:bull_bear:20160602004410p:plain

【米国】雇用統計 - 経済指標 - Yahoo!ファイナンス

5月の第1週金曜日に発表された非農業部門雇用者数は16万人と予想より大幅に悪かった。

その結果、一時為替はドル円106円と急速な円高になった。

その後、円高は一服し、ドル円は110円近辺へ、日経は17000円近辺へと回復した。

 

普通、アメリカの雇用統計が悪いとなれば、さらなる円高になるはずだが、そうはならなかった。

 

これは、

  • 日本の為替介入姿勢の強化
  • 急激な円高の一時的な調整

などが表面的な要因としては挙げられる。

が、おそらくは、アメリカの利上げ懸念が後退した、というのがそれ以上に大きい気がした。

 

アメリカの利上げが早まると、世界の景気が引き締まる可能性が高くなる。

そうなると、リーマンショック時のように、円高、株安へ向かう現象が起こりうる。

今回の指標を見る限り、急速な利上げを行う事にはならないだろう、という市場の安心感から、このような結果になったと思われる。

 

そして、1ヶ月前経つと、また状況は変わっていた。

今後数カ月の利上げ、おそらく適切=イエレン米FRB議長 | ロイター

 

後退したはずのアメリカ利上げ懸念だったが、

数ヶ月以内に行うのが適切だという発表を、利上げの決定権を持つ、アメリカFRBの議長本人が語っている。

市場の見方も、6月か7月には利上げを行う可能性が高いと見ている。

 

そうなると気になるのは、今週の雇用統計である。

これも過去のデータだ。

しかし、今回の過去のデータは、非常に重要だと思っている。FRBが、利上げを行うかの参考にするためだ。

そのため、やはり今週の雇用統計は注目してしまう。

 

まとめ

  • 指標(データ)を見るだけで無く、現場を見ることで投資に役立つ可能性がある
  • 指標(データ)は、確かに過去の物だ。しかし、世界の政策はそのデータを参考にする。それに問題を裏付けてくれることもある。だから軽視するべきはない。

今回書籍を読んで、データだけでなく、可能なら現場を見ることも大切にしたいと思った。

投資の現場。それは、企業だけでなく、町中を歩くだけでも、見えてくる物があるかもしれないからである。

書籍紹介

どんな仕事でも必ず成果が出せる トヨタの自分で考える力

どんな仕事でも必ず成果が出せる トヨタの自分で考える力